ワクチン抗体価検査劇場

お散歩デビューのタイミングを見極める

いい子に育つといいなあ

「子犬は生後3ヶ月までにほかの犬とふれあって社会性が育つ」…よし

あと一回ワクチンが

この子、ちゃんと抗体があるから大丈夫よ


かわいいワンちゃんのお散歩デビュー。
飼い主的に可愛いうちに、あちこちつれて回りたい気持ちもありますが、子犬の心の成長の面からもできるだけ早くしてあげたいですよね。

生後3か月までに他の犬との触れ合いを含めた様々な刺激を与える事は、これからの犬の躾や性格付けの面からも非常に重要だと考えられています。

ですが、その頃の子犬には、様々な病気から身を守る準備ができていないのも事実。
そこで、必要になるのが幼齢期の子犬へのワクチンプログラムです。

子犬へのワクチンは一般的に間隔を空けて2~4回程度行います。
これは、子犬の体内で確実に抗体を作り出すためです。

子犬には母犬から初乳を介して受け継いだ抗体(移行抗体)がありますが、これが体内にあるうちは、ワクチンによる抗体ができません。
移行抗体が消える期間は個体により大きな差があるため、時間差で何度かワクチンを打つ必要があります。

世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチネーションガイドライン(2015)では移行抗体によるワクチンへの干渉リスクを低減させワクチン効果をできるだけ完全なものにするため、子犬のコアワクチン接種は6 ~ 8 週齢で1 回目の接種を行い、その後、2~4週ごとに16 週以降まで接種する方法が推奨されています。
しかし、それでは犬の社会性をはぐくむ生後3か月頃までの大事な時期を刺激の少ない室内で過ごす事になります。

そもそも、繰り返しワクチンを接種するのは、確実に抗体を体内に作り出すためです。
逆に言えば、抗体がしっかり作られていれば、以降のワクチン接種はせず前倒しでお散歩デビューができるのです。

そこで、2回目のワクチン接種後2~3週間以降にワクチン抗体価検査を行うことをお勧めします。
この時点で重要な感染症に対しての抗体が作られている事が判定できれば、幼齢期の通常のワクチンプログラムと比較して2~4週早いお散歩デビューが可能になります。(全ての個体で早くなるわけではありません。)

※2回目接種後2~3週間以降にワクチン抗体価検査を実施することで、抗体ができていないケース(ローレスポンダーまたはノンレスポンダー)の発見にもつながります。
※2回目のワクチン接種後に重要な感染症に対する抗体が作られている事が確認できたワンちゃんでも、より確実に(免疫記憶を含めた)獲得免疫を成立させるため、16週齢以降に子犬期の最終ワクチン接種をお勧めします。

かわいいワンちゃんのお散歩デビュー。
必要な時期に、安全に迎えさせてあげたいですね。


子犬のお散歩デビューが早い方が良い理由は『子犬の社会化とは』をご覧ください。
子犬の抗体価検査については『犬のワクチン抗体価検査 子犬編・成犬編』をご覧ください。



子犬の社会化とは

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犬のワクチン抗体価検査
子犬編・成犬編

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※ワクチン抗体価検査のご相談は、かかりつけの獣医師様にご相談ください。